「アサガオが美しいのは、夜の暗闇と冷たさがあるからなのだ。」
民主党代表選の野田首相演説。私はこの言葉を聞いて素直に感動した。
野田首相は当選5回。しかし1度落選を経験し、浪人を経験。昨年財務大臣に就任するまで、千葉県船橋市内の各駅で演説を続けた。
「政治活動の原点。一日演説すれば0.5ミリ前進。怠ればどんどん後退。前日の夜が遅くとも、体調が悪くてもとにかく立つ」
政治家は選挙の時しかみないが、野田は違う。地道に、市民に訴え続けたのである。私はそんな野田の直向きに努力を続ける姿勢がとても好きだ。
野田は今まで理想主義だった鳩山・菅とは違う現実主義者。増税を前面に掲げ、鳩山が掲げた「東アジア共同体」や、菅が掲げた「脱原発路線」などの理想的な路線から踏み出し、現実を見極めた上で政策を遂行していく。言葉は常に慎重だ。
現実主義を円滑に実行すべく閣僚人事にも気を配った。小沢を敵対視することなく、内へと取り込む。興石幹事長がそのシンボルだ。また、財務関係の素人である安住を財務大臣に据えたのは、首相自身と同じような考えを持つ財務官僚の意見を素直に吸収してくれるし、自身と財務省の橋渡しにもなりやすいからであろう。
野田首相のリーダーシップの元、民主党は本当に挙党態勢を目指して頑張っているように見える。ただ、よくよく考えてみると、野田政権はかなり内向きであることがわかる。
海外より国内。日本の政治によくみられる。
米軍基地問題や自衛隊活動などがその典型である。
今回挙党態勢を築くべく、党内のバランスを考慮した閣僚人事を行った。ただ、それはほとんど内向きの姿勢である。財務大臣である安住は先程述べたとおり素人。外務大臣に就任した玄葉だって外交に関しては素人であると聞く。そのような者に重要閣僚を任せていいのか。官僚のいいなりになり、ただ省益を求めるだけの操り人形にはならぬのか。
米国では閣僚に専門家が就くことが多い。任期も比較的長く、如何なくリーダーシップを発揮できる。専門家vs素人。大学の教授と学生が同じ土俵で戦うようなものである。不可能ではないが、かなりハンデがあることだろう。
だから日本の政治は3流と呼ばれる。だから日本の対外交渉力は弱い。
この原因は首相を選任する際に間接民主主義が取られていることに起因する。国会議員が首相を決めるから、内向きの馴れ合いがひこ起こったり、党内対立などが激化したりする。ある議員が押した議員がその対価としてポストを得られる。「挙党態勢」を築くためである。よって素人でも構わない。
米国では国民が直接大統領を選ぶ。そこには、日本ほど国会議員同士の馴れ合いは起きにくい。自分の政策の素晴らしさを説得する対象は、国会議員ではなく国民だからである。よって閣僚人事も、大統領がリーダーシップを発揮しやすく、日本よりその道のスペシャリストが就任する。
この力の差は対外交渉力に大きくでることだろう。
野田政権の船出は順調である。ただ、それは日本国内のこと。世界に対してはどう動くか。それが今後より問われてくることになろう。
世界に挑む素人集団野田内閣。演説がうまいだけでは、世界に誇る日本を築くことは難しい。