2010年9月20日月曜日

『国家の罠 -外務省のラスプーチンと呼ばれて-』佐藤優著



 大学時代、一度外交官になりたいと思っていた私。そんな私にとって外交官の実務的な事が多くかかれているこの本は私の好奇心をそそる。

 「国家の罠」。
 このようなことが本当にあるのか。私は目を疑った。

 「国策捜査」。本に出てくる西村検事はこの言葉を多用する。

 「これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです。」

 「時代のけじめ」。本書によると、佐藤優はこの鈴木宗男事件が、日本の「国際協調的愛国主義」から「排他主義的ナショナリズム」へ、「公平配分モデル」から「傾斜配分モデル」への転換を促進しているという。

 簡単にいうと、内政上は競争原理を強化することによって競争原理を強化させ、国力を強化すること。そして外交上は日本人の国家意識、民族意識が強化されるということだ。小泉政権は「小さな政府」を目指し、「靖国問題」や「北朝鮮拉致問題」が顕著化しナショナリズムが強化された。まさにこの流れと合致する。

 鈴木宗男はニューディール政策のような公共事業による経済活性化を図る「公平分配モデル」に近く、北方領土支援事業などを行う「国際協調的愛国主義」路線に舵を取っていた。宗男氏は時代の転換を促進するためのきっかけとして格好の標的であったのだ。そして、著者佐藤優はそのきっかけとして逮捕されることになる。


 ロッキード事件、リクルート事件、ライブドア事件、そして現在も大きな議論となっている小沢一郎事件。

 これらはすべて「国策捜査」なのか。

 本書によると、「国策捜査」の適用基準は一般国民の基準であるようだ。


 「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショーと週刊誌の議論で事件ができていくことになるよ。」
 著者は言う。
 「そういうことなのだと思う。それが今の日本の現実なんだよ。」
 西村検事は言う。


 日本の法治システムは本質的に機能しているのか。選挙に選ばれぬ国家権力が選挙に選ばれた罪のない国会議員を権力の座から落としていく。

 民主主義国家日本?法治主義国家日本?
 この国は闇に包まれている。


 いずれにせよ、この事件を作り上げようと立ち上がった人物は、一体だれなのだろうか。

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