先週から始める『景気指標から「今の経済を読む」』。
小宮一慶著『日経新聞の数字がわかる本』
週刊東洋経済2010年3月20日号『データが読めれば経済がわかる!』
を読んで、経済データを読むだけで景気の大枠をつかむことができることを知り、早速経済分析を始めてみました。
毎週月曜日に日経に掲載される「景気指標」を読み、経済を読み解いていこうと思います。毎週月曜日更新目指します。
自分の勉強用+自己満なので拙い部分が多いだろうと思います。注意して読んでください。
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「デフレと資源高は大きな悪材料。業績回復基調にあるものの、設備投資は増えず。二番底懸念は遠のいたが、本格的な回復は遠い。」
日本内需の大きな回復よりも海外外需に依存する日本経済。製造業、サービス業共に業績は回復傾向にあるが、輸出が大きく伸びていることからわかるように外需の影響が大きい。残業が増えるだけで、新たな雇用には結びついておらず、内需の拡大も見込めない。外需を引っ張る製造業はデフレと資源高に見舞われ、先行きは不透明である。外需に頼る今の経済は長期的に回復傾向にあるとは言い難い。
先週の主な景気指標
国内
2月大型小売店販売額(経済産業省)
2月小売業販売額(経済産業省)
2月失業率(総務省)
2月有効求人倍率(総務省)
2月全世帯家計調査・消費支出(総務省)
2月鉱工業生産・速報(経済産業省)
日銀短観(日銀)
※赤字は今週の景気指標で変更した箇所
景気全般:足元では全体的に景気回復の兆候が見られる。
景気動向指数(CI)(2010.1)の一致指数は100.1と、前月97.4を上回り100を超えて景気が拡張局面にあることを示している。
日銀短観(3月)の企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でマイナス14となり、新基準で算出した前回(マイナス25)から11ポイント改善した。3か月先の見通しは改善だが、改善幅は縮小。
だが設備投資にはつながらず、依然低水準。設備投資額の減少率は縮小しているものの、大企業全産業は前年比-0.4%。上昇しているのは中堅企業の製造業のみで、前年比4.2%増。
ただ、ソフトウェアを含む設備投資だと大企業全産業は前年比0.7%増となり、全体的に減少率は縮小する。ソフトウェアに対する設備投資は多いようだ。
本格的に増産体制に移り、設備投資が増えなければ経済の大きな回復は見込めない。2番底懸念はあまりないが、本格的な回復にはまだ時間がかかりそうだ。
製造業:生産も回復に向かうが、まだ不安が残る。
新興国の輸入、政府によるエコポイントやエコカー減税などによって製造業全般の生産高は回復基調。鉱工業生産指数(2010.1)は91.3と、前月比0.4%減。減少は1年ぶり。
輸送機械工業(自動車など)の生産は前年同月比78.4%上昇しているが、前月比では2.5%の低下。トヨタのリコール問題が影響しているとみられる。
製品在庫は前月比1.0%上昇と2ヶ月連続の上昇。在庫率は111.0と0.8%上昇し、未だ在庫超過が続いている。在庫の上昇に寄与したのは情報通信機械(液晶テレビなど)、鉄鋼業、石油・石炭製品工業である。液晶テレビなどは4月に一部基準が厳格化されるエコポイント制度で、エコポイント対象外になった液晶テレビの在庫が増加しているようだ(日経)。
製造業は回復基調にあり、二番底の懸念は遠のいたが、成長に限界が見えてきた格好だ。外需に頼っているばかりでなく、内需を喚起しなければ更なる大幅な回復は難しくなりそうだ。ただ、製造業には、「デフレと資源高」の問題にも直面している。
自動車産業:エコカー減税の効果か?自動車産業回復基調。
新車販売台数(2010.2)は45.8万台と、前月の36.7万台を上回り、徐々に回復傾向。リーマンショック(2007)の1か月平均44.3万台を超えた。小売業販売額(2月)は前年同月比4.2%増だったが、うち自動車小売業は15.0%と大きく寄与した。自動車産業の回復は、日本に大きな影響を与えている。エコカー減税の効果が大きいことがわかる。エコカー減税は2012年3月まで適用されるので、当分の間、自動車業界は政策の恩恵を受けることができるだろう。
ただ、何故か家計調査消費支出は0.5%減少で、そのうち「自動車等関係費」寄与度は0.76のマイナスである。家計調査のサンプル数は少ないため、統計上の問題があると聞くが、何が原因で「小売販売額」と家計調査」の差は生まれるのだろうか。販売台数は増えているが、販売額が減少しているということだろうか。
消費:わずかに減少。電機、エコポイントで堅調。自動車消費減少。
消費支出はGDPの55%を占める注目すべき指標である。
2人以上の世帯の消費支出(2月)は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.5%減少した。7カ月ぶりの減少。だが、液晶テレビなどの電機商品の、消費支出実質寄与度は0.42。エコポイント制度は4月から一部変更。適用基準が厳しくなったので、一部エコポイント対象外となる液晶テレビへの駆け込み需要などが大きく影響しているようだ。減少したのが自動車や葬祭費などの費用。中古車、新車販売台数は、前年同月比ともに増加しているが、販売額は減少しているということだろうか。
小売:小売販売額は過去2番目で大きな伸び。
小売業販売額(2月:速報)は前年同月比4.2%増の10兆3970億円。過去2番目に大きな伸びとなった(日経)。ただ、依然リーマンショック(2007年)34兆8630億円の3分の1程度。景気は回復基調にあるので、更なる増加が期待できる。衣服、飲食、自動車、機械、燃料など幅広い分野で伸び、特に自動車(15.0%)、燃料(20.7%)、機械(8.6%)が大幅に上昇した。ただ、百貨店やコンビニなどの各種商品小売は4.5%減少し、全体の伸びを引き下げている。特に百貨店などの大規模な小売店の下げが目立つ。
物価:デフレと再び巻き起こる資源高。
国内では2008年度より消費者物価指数が下落し、デフレが続いている。消費者物価指数(2010.2)は99.2と、前月の99.2と横ばい。ただ、前年比では-1.2とデフレが縮小する兆候はない。反面、輸入物価指数(2010.2)は前月比-0.6だが、前年比では8.0増と上昇傾向に。中でも石油・石炭・天然ガスは前年比22.9、前月比0.5の大幅増。金属・同製品は前月比では-2.4と縮小しているもの、前年比7.3と大きく増加している。
ブラジル鉄鋼最大手ヴァーレが価格決定方式を変更し、中国の強い需要を背景に鉄鋼価格を114%上昇させると発表する(ロイター)など、再び資源高の兆候がみられる。しかし、日本は今デフレの最中。原料価格の下落を製品価格に転嫁しづらい状況が続く。
製造業は徐々に生産を増やし、回復傾向にあったが、まだ新たな設備投資につながっているほどではない。また、デフレと資源高が続くこの局面では、当分の間業績の急回復は望めず、逆に再び失速する恐れがある。
ヴァーレが新方式によって鉄鉱石価格を上げるのは4月。鉄鉱価格は、鉄鋼業界はもちろん自動車産業や電気機器など多岐に影響を及ぼす。二番底の危機は間近に迫っているようだ。
第三次産業:サービス産業は大きく回復。
第3次産業活動指数(2010.1)は98.7と、22年ぶりの大幅上昇(ロイター)となった。指数に組み込まれる13業種のうち、卸売、小売業が5.2増と大幅に増加。減少したのは3業種で、金融・保険業が1.1減。
ただ、依然サブプライム・ショック(2007)時の103以下。更なる成長の余地がありそうだ。
貿易:3か月連続で前年比2ケタ増
通関ベース貿易収支(2010.2)では、前年比45.3%増、貿易黒字は前年比でなんと818.8%も回復した。国内の需要が減る中で、海外の需要によって経済が回復する流れが鮮明になっている。
主に回復した製品が、自動車で105%増。自動車部品は121.7%増で、半導体も69.1%増加している。主な輸出先はアメリカ、中国を含むアジア諸国。特に中国への輸出は前年比79.9%増加し、米国の24.2%を大きく上回る上昇だ。これからも中国は日本最大の輸出相手国として大きな存在となっていきそうだ。
雇用:雇用は横ばい。製造業、第三次産業などは回復傾向にあるが、持続するか不透明。よって雇用の回復は当分見込み辛い。
所定外労働時間※全産業(2010.1)は前年比4.4%増と、前月-3.2%と比べて増加傾向にある。残業は業績によって一番先に増減する部門なので、足元の業績回復を表しているようだ。長期的には依然不透明な部分が多いが、雇用関係の指標は小幅に回復しつつある。有効求人倍率(2010.1)は0.47倍で前月0.46倍と若干回復、完全失業率は4.9%で前月4.9%と横ばいだが、未だ低水準が続く。現金給与(2010.1)も前年比-0.2、前月-5.9%。
だが、雇用が本格的に回復しない限り、国内需要は増加し辛い。デフレが続き、業績が縮小、賃金が悪化し雇用も伸びない。日本経済はまさに「デフレスパイラル」の最中にあるといえそうだ。
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