しかも発行されたのは1990年である。
「首相公選制」。
私は小泉政権が崩壊し、その後首相が約1年ごとに交代してしまうようになってからこれまでずっと必要だと思っていた政策だ。それを、1990年の時点で唱えていた。しかも、全く信用されぬようになった政治制度への強い抵抗論を唱えているのである。1990年初めといえばまだ日本の経済力は世界に誇る水準であり、バブル景気の中にある時代である。そんな時から現在の政治体制に異論を唱え、日本を改革する漫画が存在しているとは思いもよらなかった。
日本はまだ腐りきっていない。世界に誇る国である。問題は政治。しいて言えばその政治制度に大きな問題があるのである。
国の代表となる首相が1年で崩壊してしまうこの異常事態。政治改革が全く進まず、いつまでも過去から姿を変えぬこの日本。
その原因は政治の強力なリーダーシップ、更に言えば首相がリーダーシップを発揮できない政治制度。そして国民の政治に対する無関心。特に若年層における政治の無関心さにある。
米国や他の先進諸国、目覚しい発展をとげている国々では大統領、もしくはそれに当たる地位にあるリーダーが強い指導力を持っている。それは国民から直接選ばれ、任期の間はその職務を全うし、自身の政治理念を強力に推進し、実現させようとする。日本でこのようなことを起こすには、小泉元首相のような人物が現れるまで待つしかない。それではこの日本は大きく出遅れてしまう。
このサンクチュアリはこの問題点を上手く捉えている。
「教育と開国」
さらに、この国に必要なのは教育による日本国民の意識改革である。
私はある高齢者から、
「昔は仕事に就くことができるだけでありがたかったんだ。仕事さえもらえるなら、私たちはどれだけでも一生懸命働いたよ。」
今の若年層でこのような言葉を吐く者はいるだろうか。この問題の解決に必要なのは教育であり、日本の開国である。経済面でいえばTPPのような自由貿易、人材面でいえば外国人労働者の受け入れだ。競争にさらされることによって初めて国民は動く。さらに、その競争に打ち勝つことができるようなハングリー精神を持ち、グローバル社会で戦える人材を育てる教育が必要なのだ。
このサンクチュアリは見事にこの本質を捉えている。
政治制度に関することではなく、この国の「希望」に対する若いパワーによる改革への思いと、その実行力、そして背景をここまで描き上げたことに感動する。
全ての人々に贈りたい作品である。
0 件のコメント:
コメントを投稿