写真:TAKENOKO編集(日本と米国)
日本にとって最大の同盟国アメリカ。
オバマ次期政権になってもこの関係は続くのか。
米政権の対日政策はどう行うのか。
先日、知日派のナイ・ハーバード大教授を駐日大使に、キャンベル元国防副次官補を北朝鮮を担当していたヒル国務次官補の後任に打診したと報じられた。
日本経済新聞は以下のように報じる。
「日本がかかわるポストに知日派を起用するのが特徴だ。北朝鮮のテロ支援国指定の解除などを巡りさざ波が立った日米関係を悪化させないため、人事を通じて対日重視姿勢を鮮明にした格好だ。」
このようにあたかも日本重視と捉えることができるような感じであるが、実際今の米政権は日本をどう捉えているのだろうか。
ゼーリック元米国務副長官は「アジアの真のパートナーは中国だ」と言っていた。
日本が国連安全保障理事会の常任理事国にさせて欲しいなどと要求ばかりして、特に国際安全保障問題においてあまり貢献できていないから当然だろう。
1.国連の平和維持活動(PKO)に従事している日本人は四十人しかいない。中国は二千人。
2.ソマリアの海賊問題では中国やマレーシアが艦隊を送っているのに、日本はまだ何もしていない。自民・公明両党は海賊対策についてのプロジェクトチームを発足させているが武器使用などについて調整に時間がかかり、いつ法案は可決するのだろうか。
3.インド洋における給油法案も1年間の時限立法。日本が安全保障問題に取り組むことができる数少ない活動だというのにも関わらず、世界に積極的な姿勢を見せることができない。
これでは日本は世界の安全保障問題に対して「背を向けている」と思われているのもしょうがない。
米政権が懸念するのはこうした日本の姿勢だ。自分はゼーリック国務長官の言葉を真剣に受け止めるべきだと思う。
問題の本質は、オバマ次期政権が対日政策をどう行うかではない。日本が米国とどう接していくかだ。
日米同盟は日本が米国にすがりよっている感がある。米国の顔色を常に窺っている。だから日米同盟においてリーダシップを発揮できない。しかしいつまでたってもこの姿勢を保っていてはだめだ。
オバマ次期大統領は日本にチャンスを与えた。特に知日派の重鎮であるナイ氏を駐日米大使に打診したことは大きい。日本が関わる閣僚人事は知日派が多数を占めているということはそれだけ日本に対して期待をしているし、日本に対して理解してくれるだろう。そういう意味で日本の今後の対米政策がより一層重要となってくる。
では日本はどうすればよいか。日本経済新聞の経済教室で東京大学教授の北岡伸一氏は以下のように述べた。
「日本の問題は、必ずしもねじれ国会のせいではない。野党が反対してできないということは、世界のどの国も理解する。しかし、いくつかの問題は野党のせいではない。たとえばインド洋における給油は、なぜ一年の時限立法なのか。連立与党への配慮のためではないか。もっと政府開発援助(ODA)を増やせないのは財務省の反対のせいではないか。平和維持活動にもっと参加できないのは、自衛隊や警察や内閣法制局のせいではないのか。四五年以来の大転換に遭遇しているのに、政府一丸となった必死の努力が見られないのである。」
自分もその通りだと思う。そろそろ日本も国際社会に対して目を向けないといけない。
しかし問題はその方策だ。北岡氏は続けて以下の方策を提案した。
安全保障面で日本に求められる方策
1.集団的自衛権に関する解釈の見直し
2.インド洋での海自給油活動の継続、ISAF参加の検討
3.アフガニスタンの麻薬撲滅協力
4.イラン問題の仲介
5.国連平和維持活動への積極参加
しかし、過度の安全保障政策への関与はできない。
軍事的な面を含んだ外交政策は日本において望ましくないだろう。
日本は憲法第9条があるように世界に類をみない平和主義国家だ。この精神は失ってはいけないし、国民も大多数がこのように感じている。
それでは何を行うべきか。
「ソフト・パワー」という概念がある。軍事力や経済制裁など物理的・経済的な力を示すハードパワーに対応する、文化や価値観、国際交流など非物理的な力を通じて行使する影響力を指す言葉だ。
日本はアフガニスタンに対して軍事的に深く安全保障問題に関与はできない。しかし現駐日米大使シーファーの言うように、日本は医療、行政、衛生管理などで協力できる。そのために自衛隊を送る必要はない。民間で十分できる。幸運なことに、このソフトパワーの提唱者はなんとナイ氏だ。
「日本はまだ、世界システムの中で指導的な立場にあるとは言えない。それが日本にとって、これからの課題となるだろう。」米戦略国際問題研究所ジョン・ハムレ氏はこのように述べた。国際社会に対して背を向けず、積極的に参加していけばアメリカの日本に対する懸念も少なくなり、日米関係もより良好なものとなっていくだろう。
ナイ氏をはじめとする知日派を中心とした対日人事は日本にとってチャンスだ。しかしこのチャンスを活かさなければ意味がない。
"It is only the chance for us to make that change"
「(この勝利は)我々が変化を起こすためのチャンスにすぎないのです。」
オバマ氏は大統領に当選したときの勝利演説でこう述べ、米国の変革を約束した。
日本も変革の時である。
"Yes, we can"
(参考文献)
日本経済新聞
特集――多国間主義で秩序安定、米戦略国際問題研究所ジョン・ハムレ氏(世界を語る)
2008/08/02, 日本経済新聞 朝刊, 11ページ
特集――同盟、政争の具にするな、駐日米大使シーファー氏(世界を語る)
2009/01/10, 日本経済新聞 朝刊, 9ページ
駐日米大使、ナイ氏に打診、対日重視、人事で示す、北朝鮮ポスト新設も検討。
2009/01/09, 日本経済新聞 朝刊, 3ページ
第1部サバイバビリティ(4)岡本アソシエイツ代表岡本行夫氏(世界この先)
2009/01/05, 日本経済新聞 朝刊, 3ページ
米次期政権と日本の対応(上)大転換期、共同で乗り切れ、東大北岡伸一氏(経済教室)
2008/11/11, 日本経済新聞 朝刊, 29ページ
中央日報
オバマ次期政権、日本との密着外交を予告
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=109801&servcode=A00§code=A00
毎日新聞
アメリカよ・新ニッポン論:金融危機 試される日米同盟
http://mainichi.jp/select/world/news/20090101ddm002020013000c.html